夜空にはたくさんの星があり、それらを結んで想像する星座も多くの種類があります。そのなかでも一般に広く知られているのは、星占いの12星座ではないでしょうか。そんな12星座のうち、唯一生き物ではない星座、てんびん座について解説していきます。

神話:女神が空に忘れていったもの
てんびん座の物語は、前回紹介した「おとめ座(正義の女神アストライア)」の続きです。
人間たちが争いを始め、神々が地上を去っていく中、最後まで残っていたアストライア。 彼女は人間の善悪を測るために、常に「黄金の天秤」を携えていました。
正義を説いても争いをやめない人間に絶望し、彼女が天に昇っておとめ座になったとき。 その手元にあった天秤も一緒に空へと上げられ、おとめ座の足元で「てんびん座」となりました。
もともとは、さそり座のハサミの一部だったとも言われていますが、ローマ時代に「秋分の日(昼と夜の長さが同じになる日)」がこの星座にあったことから、「バランスをとる天秤」として独立したと言われています。 昼と夜、善と悪、暑さと寒さ。 その釣り合いをとる役割を、この星座は担っているのです。
注目の星:幻の緑色「ズベン・エス・カマリ」
てんびん座は、「く」の字を裏返したようなシンプルな形をしています。 その中で注目してほしいのが、β(ベータ)星の「ズベン・エス・カマリ(Zubeneschamali)」です。
まるで魔法の呪文のような名前ですが、アラビア語で「北の爪」という意味です(昔はさそり座の爪だと思われていた名残ですね)。
この星、実は天文学の世界で「唯一、肉眼で緑色に見える星」だと言われているのです。
星の色というのは、温度によって決まります。 高温なら「青」、中温なら「白や黄色」、低温なら「赤」。 物理学的には、「緑色の星」は存在しないとされています。
しかし、昔から多くの天文学者が「この星は、白というより…淡い緑色に見える気がする」と記録に残しているのです。 現代でも、望遠鏡で覗いた人から「エメラルドのように見えた」「いや、やっぱり白だ」と議論が絶えません。 あなたの目には、何色に映るでしょうか? 白黒はっきりつける天秤座の中に、色の正体がはっきりしない星があるなんて、少し皮肉で面白いですよね。
星の科学:ハビタブルゾーンの惑星
神話や色の話だけでなく、最新科学の話題も一つ。 てんびん座にある「グリーゼ581」という星の周りで、地球によく似た惑星が見つかっています。
そこは、暑すぎず寒すぎない「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」と呼ばれる場所。 水が液体のまま存在でき、生命がいるかもしれないと世界中でニュースになりました。
バランスを司るてんびん座の中に、生命にとってちょうどいいバランスの環境がある。 偶然かもしれませんが、宇宙の神秘を感じずにはいられません。人間の善悪を測り、昼と夜を測り、そして生命の可能性まで測っているかのようです。
てんびん座を見つけるには、おとめ座のスピカと、さそり座の赤い星(アンタレス)の間を探してみてください。 控えめに輝く、歪んだ四角形のような星の並びが見つかるはずです。

参考文献
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