夜空にはたくさんの星があり、それらを結んで想像する星座も多くの種類があります。そのなかでも一般に広く知られているのは、星占いの12星座ではないでしょうか。そんな12星座のうち、水瓶を抱えた少年、みずがめ座について解説していきます。

神話:鷲にさらわれた、世界一の美少年
みずがめ座のモデルとなった少年、その名は「ガニュメデス」。 トロイアという国の王子であり、人間界で「世界一美しい」と称賛された美少年でした。
ある日、ガニュメデスが羊の世話をしていると、その美しさが天界の大神ゼウスの目に留まりました。 「なんて美しいんだ。彼をそばに置きたい」 そう思ったゼウスは、自分を「巨大な鷲(わし)」の姿に変え、空から急降下! ガニュメデスをその鋭い爪で掴み、天界のオリンポス山へと連れ去ってしまったのです。
突然の誘拐劇ですが、天界に連れてこられたガニュメデスには、永遠の若さと命が与えられました。 そして彼は、神々が宴会で飲む不老不死のお酒「ネクタル」を注ぐ、給仕係(カップベアラー)としての役割を与えられたのです。
夜空のみずがめ座は、彼が神々の杯に酒を注いでいる姿。 ちなみに、彼をさらった鷲も一緒に星座になっています(夏の大三角で有名な「わし座」です)。 ゼウスの情熱(あるいは強引さ)と、それに翻弄された美少年の物語が、夜空にはセットで描かれているのですね。
宇宙の神秘:夜空に浮かぶ「神の目」
さて、ここからがみずがめ座の「科学的」なハイライトです。 この星座の足元あたりに、「らせん星雲(Helix Nebula)」と呼ばれる有名な天体があります。
望遠鏡で撮影されたその姿は、衝撃的です。 中心に瞳のような点があり、その周りを赤や青のガスが楕円形に取り囲んでいる…。 その姿があまりにも人間の「目」にそっくりなため、天文学者たちはこれを「神の目(The Eye of God)」と呼びました。

この正体は、死を迎えた星が、自分の中身(ガス)を宇宙空間に放出している姿です。 太陽と同じくらいの大きさの星が一生を終える時、爆発するのではなく、こうして静かにガスを広げて美しい星雲になるのです。
ガニュメデスが持っている水瓶から流れ出ているのは、ただの水やお酒ではなく、こうした「星の命の源(ガス)」なのかもしれません。 この「神の目」は地球から比較的近く(約700光年)、非常に大きく見えるため、みずがめ座を代表する絶景スポットとなっています。
注目の星:あふれた水はどこへ行く?
視線をもう一度、少年の手元に戻しましょう。 ガニュメデスの水瓶からチョロチョロと流れた水(酒)は、南の空低い方へ向かって落ちていきます。
その行き着く先に、一つだけポツンと明るい星があります。 「フォーマルハウト」という1等星です。
この星は、「みなみのうお座」という別の星座の口元にあたります。 つまり、ガニュメデスがこぼした神の酒を、下の魚が「いただきまーす」と口を開けて受け止めている構図になっているのです。
このフォーマルハウトは、「秋の夜空で唯一の1等星」として有名です(みずがめ座は秋の星座エリアにいます)。 都会の空でも、南の低いところにポツンと光るこの星だけは見つかるはず。 それを見つけたら、「あの上の方に、少年がお酒を注いでいるんだな」と想像してみてください。
星の雑学:ラッキー・スターがいっぱい
最後に、星の名前についての面白い事実を一つ。 みずがめ座を構成する星々には、やたらと「幸運(Luck)」という意味の名前がついています。
- サダルメリク(α星): アラビア語で「王の幸運」
- サダルスウド(β星): アラビア語で「幸運中の幸運」
なぜこんなに縁起が良いのでしょうか? それは古代、太陽がこの星座の位置に来ると、冬が終わり「恵みの雨」の季節が始まったからだと言われています。 乾いた大地を潤し、作物を育てる雨をもたらす星座。 そこから、みずがめ座は「豊かさ」や「幸運」のシンボルとして大切にされてきました。
「幸運中の幸運」なんて、名前だけであやかりたくなるようなパワーがありますよね。
美しすぎて神にさらわれた少年と、宇宙に浮かぶ巨大な「神の目」。 そして、大地に恵みをもたらす幸運の星々。
みずがめ座は、一見クールに見えますが、その瓶の中には私たちを潤すたくさんの「物語」と「奇跡」が詰まっています。もし現状に行き詰まったら、みずがめ座の方角を向いてみてください。 「幸運中の幸運」の星が、あなたの心に新しい潤いを注いでくれるかもしれません。
参考文献
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