夜空にはたくさんの星があり、それらを結んで想像する星座も多くの種類があります。そのなかでも一般に広く知られているのは、星占いの12星座ではないでしょうか。そんな12星座のうち、愛らしい「ドジっ子エピソード」をもつ、やぎ座について解説していきます。

神話:逃げろ! 神々の宴と大パニック
やぎ座のモデルとなったのは、羊飼いの神様「パーン(Pan)」です。 頭にヤギの角が生え、もともとはヤギの姿をした、陽気でフルート演奏が得意な神様でした。
ある日、ナイル川のほとりで神々が宴会を開いていました。 パーンが笛を吹き、みんなが楽しく踊っていたその時。 突然、怪物の中の怪物、最強最悪の巨人「テュポン」が現れました。
そのあまりの恐ろしさに、神々はパニック状態! 「うわあああ! 逃げろー!」 神々はそれぞれ、鳥になって空へ逃げたり、魚になって川へ飛び込んだりと、得意な変身魔法で散り散りに逃げ出しました。
パーンも慌ててナイル川に飛び込み、「魚に変身して泳いで逃げよう!」と呪文を唱えました。 しかし、あまりにも焦りすぎていたため…
「やばい! 下半身しか魚になってない!」
なんと、水に浸かった下半身だけが魚になり、水面に出ていた上半身はヤギのまま…という、中途半端な姿になってしまったのです。
これを見た大神ゼウスは、逃げる途中にもかかわらず大爆笑。 「あはは! パーン、その姿は最高だ! 面白いから記念に空に残しておこう」 こうして、変身に失敗して溺れかけた姿が、そのまま星座になってしまったのです。
ちなみに、英語の「パニック(Panic)」という言葉は、この時のパーン(Pan)の慌てぶりから生まれたと言われています。 なんだかやぎ座に親近感が湧きませんか?
星座の形:夜空に浮かぶ「笑った口」
そんな愛すべきやぎ座ですが、実際の夜空では少し見つけにくい星座です。 秋の空と冬の空の境界線あたりに、うっすらと暗い星が並んでいます。
星を繋ぐと、大きな「逆三角形」に見えます。 あるいは、口角が上がってニカッと笑った「口の形(スマイルマーク)」にも見えます。 まるで、自分の失敗を「てへへ」と笑ってごまかしているパーンの表情のようです。
ちなみに、西洋の古い星図(絵)を見ると、ちゃんと「前足のあるヤギ」のお尻から「魚の尾ひれ」が生えている姿(海ヤギ)で描かれています。 ぜひ一度、検索してそのユニークな姿を見てみてください。
注目の星:肉眼で見える二重星
やぎ座の逆三角形の右上の角(右の口角)に、「アルゲディ」という星があります。 この星、視力が良い人が暗い場所で見ると、「2つの星に分かれている」のが肉眼でも分かります。
望遠鏡を使わずに2つに見える星はとても珍しく、昔の人はこれを視力検査に使ったとか。 望遠鏡で見ると、その2つの星がさらにそれぞれ分かれて見え、実はとても複雑な多重星であることが分かっています。
ヤギと魚、陸と海、そして重なり合う星々。 やぎ座には、常に「二つの顔」が同居しているのかもしれません。
人間、たまにはパーンのようにパニックになったり、盛大に失敗したりすることだってあります。そんな時、夜空を見上げて思い出してください。 「神様だって変身に失敗して、しかもそれが星座として永遠に残っちゃってるんだから、私のミスなんてちっぽけなもんだ」と。
参考文献
コメント