恒星のスペクトル分類とは?|星の光に刻まれた「指紋」を読み解くしくみ

夜空の星を見比べると、色が違うことに気づきます。赤い星、黄色い星、青白い星。この色の違いは星の表面温度を表しています

実は天文学者は、星の色をさらに細かく分析することで、もっと多くの情報を読み取っています。その方法が「スペクトル分類」です。星の光をプリズムのように分解すると、まるで指紋のような模様が浮かび上がり、そこから星の正体がわかるのです。

この記事では、「スペクトル分類とは何か」を出発点に、星の光に刻まれたしくみを一緒に見ていきましょう。


目次

スペクトルとは?|光を分解してわかること

虹を見たことがある人は多いと思います。雨上がりの空にかかる虹は、太陽の光が水滴によって分解され、赤から紫までの色の帯になって現れたものです。

この「光を色ごとに分解したもの」を、スペクトルと呼びます。星の光も同じように、プリズムのような装置(分光器)を通すことで、色の帯に分解できます。

ただし、星のスペクトルをよく見ると、虹のようにきれいな帯にはなりません。帯のところどころに、黒い細い線が何本も入っているのです。この線を「吸収線」と呼びます。


吸収線が教えてくれること|星の表面に何があるか

吸収線は、星の表面付近にあるガス(おもに水素やヘリウムなどの元素)が、特定の色の光だけを吸い込んでしまうことでできる線です。

それぞれの元素は、決まった色の光だけを吸収するという性質を持っています。たとえば水素は特定の位置に、ヘリウムは別の位置に、というように、元素ごとに吸収線の現れる場所が決まっています。

つまり、星のスペクトルに刻まれた吸収線の並び方を調べれば、星の表面にどのような元素が存在しているかを調べられます。星の光は、ただの色の情報ではなく、星の成分を記録した「指紋」のようなものだといえます。


2種類の星のスペクトルを並べて吸収線の違いを見せている画像
Image Credit: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI)

なぜ吸収線の強さが星によって違うのか|温度との関係

実は多くの恒星は、主に水素とヘリウムでできています。それでも吸収線の現れ方が異なるのは、温度によって原子の状態が変化するためです。

たとえば水素の吸収線は、表面温度が1万度前後の星で最も強く現れます。これより温度が高くても低くても、水素の吸収線は弱くなっていきます。一方、ヘリウムの吸収線は、もっと高温の星でないとはっきり現れません。

つまり、吸収線のパターンを見れば、そこに含まれる元素の種類だけでなく、星の表面温度までわかるということです。スペクトル分類とは、この吸収線のパターンをもとに星を分類するしくみなのです。


スペクトル型O・B・A・F・G・K・M|高温から低温への7段階

天文学では、星を表面温度の高い順に、O型・B型・A型・F型・G型・K型・M型という7つのスペクトル型に分類します。

スペクトル型表面温度の目安
O型約3万度以上青白
B型約1万〜3万度青白
A型約7500〜1万度
F型約6000〜7500度黄白
G型約5000〜6000度
K型約3500〜5000度
M型約3500度以下

この並び順は、温度の高い順に並べると一見バラバラなアルファベットになってしまうのですが、これには歴史的な経緯があります。もともと吸収線の強さだけで分類されていたものを、後から温度順に並べ直した結果、このような順番になりました。

天文学を学ぶ人の間では、この順番を覚えるために「Oh Be A Fine Girl/Guy, Kiss Me」という語呂合わせが使われることもあります。覚える必要はありませんが、知っておくと星の分類表を見たときに迷わずに済みます。

私たちの太陽は、表面温度が約6000度のG型に分類されます。冬の夜空で青白く輝くオリオン座のリゲルはB型、赤く見えるベテルギウスはM型です。


同じスペクトル型でも明るさが違う星がいる

ここで一つ、注意しておきたいことがあります。スペクトル型が同じだからといって、必ずしも同じような星とは限りません。

たとえば同じM型でも、ひっそりと輝く赤色矮星もあれば、太陽の何百倍もの大きさに膨らんだ赤色超巨星もあります。どちらも表面温度は同じくらい低いのですが、星の大きさがまったく違うのです。

このため天文学では、スペクトル型に加えて「光度階級」という分類もあわせて使い、星の大きさや進化段階の違いを区別しています。スペクトル型は、あくまで星の「温度」を表すものさしだと理解しておくとよいでしょう。


スペクトル分類から見えてくること

スペクトル分類は、星の表面温度を知るための手がかりであると同時に、星がどんな元素でできているかを知る手がかりでもあります。

宇宙にある星のほとんどは水素とヘリウムでできていますが、ごくわずかに含まれる他の元素の量を調べることで、その星が宇宙のどの時代に生まれたのかという手がかりも得られます。古い時代に生まれた星ほど、重い元素をあまり含んでいないことがわかっているからです。

つまり、星の光を分解して吸収線を読むという作業は、星の「今の姿」だけでなく、その星が背負ってきた歴史までも読み解く作業なのです。


まとめ|星の光は、情報の詰まった指紋だった

この記事で見てきたことをまとめます。

星の光をプリズムで分解すると、吸収線と呼ばれる黒い線の入ったスペクトルが現れます。この吸収線のパターンから、星の表面温度と、表面にある元素の種類がわかります。天文学では、この温度をもとにO・B・A・F・G・K・Mという7つのスペクトル型に星を分類しています。

次に夜空を見上げるときは、星の色の奥にある「光の指紋」を思い浮かべてみてください。何気なく見ていた一つひとつの瞬きが、それぞれの星の温度と成分を語りかけてくる光だったことに気づくはずです。


参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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