夜空には、力強さや優しさ、美しさといった「性格」を持った星座たちが描かれています。そのなかでも一般に広く知られているのは、星占いの12星座ではないでしょうか。そんな12星座のうち、おうし座について解説していきます。

神話:恋に落ちた白い牛
おうし座のモデルは、ギリシャ神話の最高神ゼウスが変身した「真っ白な牛」の姿です。
ある日、フェニキアの王女エウロペが海辺で遊んでいると、波の中から一頭の美しい牛が現れました。 その牛は雪のように白く、角は宝石のように輝き、とても穏やかな瞳をしていました。
あまりの美しさに心を奪われたエウロペが、そっと背中に乗ると、牛は立ち上がり、そのまま海を渡ってクレタ島へと連れ去ったのです(実はこれがゼウスの求婚でした)。
夜空に描かれているおうし座は、この牛の上半身だけが描かれています。 これは、彼が海からザバーッと姿を現した瞬間、あるいは海を泳いで渡っている姿だからだと言われています。 力強さの中に、王女さえも魅了する「美しさ」を秘めている。それがおうし座なのです。
注目の星①:赤い瞳「アルデバラン」
おうし座の顔を見てみると、ローマ字の「V」の字に星が並んでいるのが分かります。 その「V」の頂点で、ひときわ赤く輝く一等星。 それが、おうし座の心臓、あるいは右目に当たる星「アルデバラン」です。
アルデバランとは、アラビア語で「後に続くもの」という意味。 一体、誰の後をついて回っているのでしょうか?
それは、このあと紹介する「すばる(プレアデス星団)」です。 夜空が東から西へ回るとき、アルデバランは必ず「すばる」の後ろから昇ってきます。 その様子が、まるで憧れの君を追いかける求愛者のように見えたのかもしれません。
この星も、以前紹介したおひつじ座のハマルと同じく、老いて大きく膨らんだ「オレンジ色の巨星」です。 冬の凍てつく空に浮かぶその暖かなオレンジ色は、見る人の心をどこかホッとさせてくれます。
注目の星②:青い宝石箱「すばる」

おうし座を語る上で、絶対に外せないのが「プレアデス星団」、日本での呼び名は「すばる(昴)」です。 牛の肩のあたりで、いくつもの小さな星が集まって輝いています。
平安時代の清少納言も『枕草子』の中で「星はすばる(星といえば、やっぱりすばるが素敵よね)」と絶賛したほどの美しさ。 肉眼でも6個〜7個くらいの星が見えることから、海外では「セブン・シスターズ(7人姉妹)」とも呼ばれています。
アルデバランが「老いた星」なら、すばるは生まれたばかりの「赤ちゃんの星たち」です。 まだ若く高温で燃えているため、その輝きは透き通るような青白色。
老成したアルデバランの「赤」と、若々しいすばるの「青」。 この美しい色の対比こそが、おうし座鑑賞の最大のハイライトなのです。
星の科学:V字のトリック
おうし座の顔を作っている「V」の字の並びは、「ヒアデス星団」という兄弟星の集まりです。 では、そのV字の中で一番目立つ「アルデバラン」もその仲間なのでしょうか?
実は、違います。 アルデバランまでの距離は約65光年。ヒアデス星団までの距離は約150光年。 つまり、アルデバランはずっと手前にいて、たまたま奥にあるヒアデス星団と重なって見えているだけなのです。
地球から見ると仲良く並んで見えますが、宇宙空間では全くの他人(他星?)。 夜空には、こうした「遠近法のトリック」がたくさん隠されています。
おうし座は、冬の夜空を見上げればすぐに見つかります。 オリオン座の三ツ星のラインを、右斜め上に伸ばしていくだけ。 最初にぶつかる赤い星がアルデバラン、その先にある小さな星の群れがすばるです。
赤い瞳の情熱と、青い宝石の純粋さ。 その両方を抱いて夜空を駆け抜ける白い牡牛の姿を、ぜひ探してみてください。
参考文献
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