おおいぬ座の神話と見どころ|狩人オリオンに従う猟犬とシリウスの秘密

冬の夜空で、ひときわ強く光る星があります。南の空にギラリと青白く輝くその星は、全天で最も明るい恒星「シリウス」です。シリウスが属するのは、狩人オリオンに従う猟犬の星座「おおいぬ座」。今夜は、この星座にまつわる神話と、シリウスの素性について整理してみます。

おおいぬ座
Image Credit: NASA, ESA, and J. DePasquale (STScI) Acknowledgment: A. Fujii

目次

神話|狩人の足元で走り続ける猟犬

ギリシャ神話において、おおいぬ座のモデルとなった犬には複数の伝承があります。

もっとも広く知られるのは、「狩人オリオンが連れていた猟犬」という物語です。オリオンが冬の夜空を西へと移動していくのを、その足元でぴったりとついていく犬。星空の上でもその忠実さは変わりません。

別の伝承では、「絶対に獲物を逃さない犬・ライラプス」の姿だともいわれます。ライラプスはもともとゼウスから贈られた神聖な猟犬で、逃げる獲物は必ず捕まえるという能力を持っていました。しかしあるとき、「絶対に逃げ切れるキツネ」と「絶対に捕まえられる犬」が追いかけっこをするという矛盾した事態が起き、ゼウスが困り果てて両者を石にして天に上げた、という話も伝えられています。

おおいぬ座のすぐ近くには「うさぎ座」があります。オリオンの足元で猟犬が獲物を追う構図が、星空の上でも再現されているわけです。


星座の形と見つけ方

おおいぬ座を見つける最も簡単な方法は、「冬の大三角」を経由することです。

オリオン座の三ツ星を目印に、そのラインを南東方向へ延ばしていくと、強い光の星にぶつかります。それがシリウスです。シリウスと、オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオンをつなぐと、「冬の大三角」が完成します。

おおいぬ座全体の形は、逆さまにした人型のようにも見えます。シリウスが「首」の位置にあたり、そこから南へ向かって星が並んでいます。星座の形そのものは複雑ですが、シリウスさえ見つければ「ここがおおいぬ座」とわかります。見ごろは1月から3月ごろの冬の夜です。


シリウスとは何者か|距離と明るさが生む「全天最輝星」

シリウスはなぜあれほど明るいのでしょうか。理由は2つあります。

ひとつは、地球からの距離が約8.6光年と近いこと。恒星としては太陽系に比較的近いご近所の星です。もうひとつは、星自体が明るいこと。シリウスは太陽のおよそ25倍の光を放つ恒星です。近さと固有の輝きが重なって、見かけの等級はマイナス1.46等に達します。これは夜空に見える恒星のなかで最も明るい値です。

シリウスには伴星(シリウスB)が存在します。シリウスBは「白色矮星」と呼ばれる天体で、かつては太陽より重い星でしたが、核融合を終えて外層を失い、地球程度の大きさに縮んだ高温の天体です。現在は肉眼では見えませんが、シリウスAとシリウスBは互いに引力で結びついた二重星系を形成しています。


古代エジプトとの接続|シリウスが担っていた役割

シリウスの明るさは、古代の人々にとって単なる観賞対象にとどまりませんでした。

古代エジプトでは、シリウスがナイル川の氾濫時期と一致して東の空に姿を現す現象(ヘリアカル・ライジング)を暦の基準として利用していました。氾濫は農地に肥沃な土を運ぶ恵みであり、その予測に使われた星がシリウスだったのです。エジプトの女神イシスと結びつけられ、「イシスの星」とも呼ばれていました。

一つの星が、神話の登場人物として語られ、農業暦の基準として計算され、現代では連星系の物理として観測されている。おおいぬ座の歴史には、人類が夜空をどう読んできたかが、小さく凝縮されています。


今夜、冬の南の空に青白く輝く星を見つけたら、それがシリウスです。古代エジプトでは季節の到来を告げる星として、ギリシャ神話では忠実な猟犬の心臓部として語られてきた星が、今も冬の夜空でひときわ強く輝いています。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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