冬の夜空の「顔」
冬の夜は、夜空を見上げるのが一番楽しい季節です。南の空を見上げれば、誰でもすぐに見つけられる砂時計のような形。3つ並んだベルトの星。 「冬の星座の王様、オリオン座。今日は、あの堂々とした輝きの裏に隠された、少し悲しい物語をお出ししましょう。
星の見どころ
左上の赤い一等星「ベテルギウス」と、右下の青白い一等星「リゲル」。 まるで、情熱の赤と、冷徹な青。この2つの星の輝きが、オリオンの複雑な運命を表しているようにも見えます。
また、有名な「三つ星(ベルト)」のすぐ下に、縦に小さく3つの星が並んでいる場所があります。ここは「オリオンの剣」にあたる部分です。
肉眼で目を凝らしてみると、真ん中の星だけ少しボヤッとしていることに気づくかもしれません。 これこそが、全天で最も有名な星雲の一つ、「オリオン大星雲(M42)」です。

ここは、ガスや塵が集まって新しい星が次々と生まれている場所、いわば**「星のゆりかご」**です。
狩人としてのオリオンは、獲物を仕留める(死を与える)存在でした。 しかし星座となった今の彼は、その剣の中に、これから輝きだす新しい星の命(生)を大切に抱いているのです。
「死」と「再生」が同居する星座。 そう思うと、冬の夜空で見かける彼の姿が、より一層神秘的に見えてきませんか?
月の女神との恋
ギリシャ神話に登場するオリオンは、海の神ポセイドンの息子で、誰も敵わないほどの力を持つ巨人(狩人)でした。彼が恋に落ちたのは、月の女神「アルテミス」。狩りの腕前も互角で、二人は惹かれ合います。
しかし、アルテミスの兄、太陽神アポロンはこれを快く思いませんでした。「乱暴者のオリオンなど妹に相応しくない」と。 ある日、アポロンは海から少しだけ頭を出して歩いていたオリオンを指差し、アルテミスを挑発します。「あそこに見える小さな的を射抜けるか?」
狩りの女神としてのプライドを刺激されたアルテミスは、それが愛するオリオンだとは知らずに矢を放ちます。矢は見事に命中。 浜辺に打ち上げられたオリオンの亡骸を見て、アルテミスは深く嘆き悲しみました。
そして彼は空へ
「せめて、いつでも私の銀の車(月)が通る通り道で、彼に会えるようにしてほしい」。 アルテミスのその願いによって、大神ゼウスがオリオンを天に上げ、星座にしたと言われています。
月がオリオン座の近くを通るとき、それは女神アルテミスが、かつての恋人に会いに来ている瞬間なのかもしれません。
腰に差した剣には、新しい命が宿っている
悲しい恋の物語を背負って夜空に昇ったオリオンですが、実は彼の腰のあたりには、とても希望に満ちた天体があるのをご存知でしょうか。
有名な「三つ星(ベルト)」のすぐ下に、縦に小さく3つの星が並んでいる場所があります。ここは「オリオンの剣」にあたる部分です。
肉眼で目を凝らしてみると、真ん中の星だけ少しボヤッとしていることに気づくかもしれません。 これこそが、全天で最も有名な星雲の一つ、「オリオン大星雲(M42)」です。

ここは、ガスや塵が集まって新しい星が次々と生まれている場所、いわば「星のゆりかご」です。
狩人としてのオリオンは、獲物を仕留める(死を与える)存在でした。 しかし星座となった今の彼は、その剣の中に、これから輝きだす新しい星の命(生)を大切に抱いているのです。
「死」と「再生」が同居する星座。 そう思うと、冬の夜空で見かける彼の姿が、より一層神秘的に見えてきませんか?
もうひとつの物語:サソリとの関係
実はオリオンには「自分の強さを自慢しすぎて、神様が放ったサソリに刺されて死んだ」という別の神話もあります。 そのため、オリオンは今でもサソリが怖くて、夏の空に「さそり座」が昇ってくると、慌てて西の空へ逃げて隠れてしまいます。
冬の王者が、夏には姿を消す。そんな臆病な一面もまた、この星座の愛らしいところですね。
まとめ
今夜、オリオン座を見つけたら、その赤い星ベテルギウスを見つめてみてください。それは、愛する人に射抜かれた狩人の、消えない胸の痛みなのかもしれません。
Image Credit: NASA/STScI, ESO and Digitized Sky Survey 2. Acknowledgment: Davide De Martin

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