冬の夜、オリオン座を見上げると、左肩のあたりに一つだけ、他の星とは違う色をした星があることに気づきます。周りの星が白や青白く瞬いているのに、この星だけはどこかワインのような赤色をしています。名前は「ベテルギウス」。
実は、このベテルギウスは、宇宙の中でもひときわ巨大な星です。その大きさと赤い色には、星の一生の最終段階に関わる、ある共通の仕組みが隠れています。

なぜ、こんなに巨大で赤いのか?
太陽のような星は年老いると大きく膨らみ、赤くなる「赤色巨星」という姿になります。ベテルギウスも、見た目はその仲間に似ています。
しかし、ベテルギウスのスケールは桁違いです。赤色巨星よりもさらに巨大で、より激しい最期に向かっている星。天文学では、このような星を「赤色超巨星」と呼びます。
赤色超巨星とは、もともと太陽よりはるかに重い星が、年老いて限界まで膨らみ、表面が冷えて赤く見えるようになった姿のこと。
仕組み①:もともと「桁違いに重い星」だった
赤色超巨星になる星は、生まれたときから普通ではありません。太陽の15〜20倍ほどの質量を持つ、いわば宇宙のヘビー級チャンピオンです。
このような重い星は、自分の体重を支えるために、中心部で核融合を非常に激しいペースで進めています。
核融合とは、星の中心部で軽い原子同士がくっつき、重い原子に変わりながらエネルギーを生み出す反応。
燃料を使うペースが速いということは、寿命も短いということです。太陽のような星が100億年近く輝き続けるのに対し、ベテルギウスのような星の一生は、わずか1,000万年ほどしかありません。猛烈なスピードで燃え尽きへ向かっているのです。

仕組み②:燃料が尽き、外側が一気に膨らむ
重い星の中心部にある燃料も、いつかは底をつきます。中心でエネルギーを作る力が弱まると、星は自分の重さを支えきれなくなり、中心部だけがギュッと縮みます。
すると、縮んだ中心部はさらに高温になり、その熱が外側のガスを猛烈な勢いで押し広げます。
ちょうど、しぼんでいた風船に一気に空気を送り込んだときのように、星の外側は急激に膨張していきます。もとが「桁違いに重い星」だった分、膨らみ方も桁違いになるのです。
外側に大きく広がったガスは、表面まで届く熱が薄まり、温度が下がります。温度が下がった星の表面は、青白い光から赤い光へと変わって見えるようになります。
どれくらい大きいのか
ベテルギウスをもし太陽の位置に置いたとしたら、地球や火星の軌道を飲み込み、推定によっては木星軌道近くまで達するほどの巨大さです。
太陽が「ビー玉」だとすると、赤色超巨星は「観覧車」ほどの大きさになる、というイメージです。赤色巨星が太陽の数十倍だったのに対し、赤色超巨星は太陽の数百倍以上にもなります。
最期に向かうサイン
赤色超巨星になった星は、すでに一生の終盤に入っています。やがて中心部でエネルギーを作れなくなったとき、ベテルギウスのような重い星は、最終的に「超新星爆発」と呼ばれる大爆発を起こすと考えられています。この爆発については、また別の記事で詳しくお話しします。

今夜、空を見上げてみると
冬の夜空でオリオン座を見つけたら、左肩のベテルギウスに注目してみてください。
その赤い光は、桁違いに重い星が、猛烈なスピードで一生を駆け抜けてきた末にたどり着いた姿です。私たちは今、宇宙のヘビー級チャンピオンの、最終ラウンドの姿をリアルタイムで見ていることになります。

参考文献