おうし座の神話と見どころ|白い牡牛の伝説とアルデバラン・すばる

夜空に描かれた星座には、それぞれ神話や言い伝えが込められています。なかでも広く知られているのは、星占いでもおなじみの12星座でしょう。今回はその一つ、おうし座について解説していきます。

おうし座
目次

神話:白い牡牛に姿を変えたゼウス

おうし座のモデルは、ギリシャ神話の最高神ゼウスが化けた「真っ白な牡牛」です。

フェニキアの王女エウロペが海辺で遊んでいたとき、波間から一頭の牛が現れました。雪のように白く、穏やかな瞳をしたその牛に、エウロペは心を惹かれて背中に乗ります。すると牛は突然立ち上がり、海を渡ってクレタ島まで彼女を運んでいきました。この牛の正体が、エウロペに恋したゼウスだったのです。

夜空のおうし座は後半身が描かれておらず、海から顔を出した瞬間、あるいは海を泳いでいる途中の姿だとされています。力強さの中に王女を惹きつけた美しさを併せ持つ星座として語られてきました。

星との対応:V字の顔とすばる

おうし座を見つける目印は、星が「V」の字に並んだ部分です。これは「ヒアデス星団」と呼ばれる、数百個の星が同じ方向へ運動する星の集団で、牛の顔から角にかけての輪郭を作っています。

そのV字の一角で赤く輝く1等星が「アルデバラン」です。アラビア語で「後に続くもの」という意味を持ち、牛の右目、あるいは赤い瞳に位置づけられています。

ただし、アルデバランはヒアデス星団の仲間ではありません。アルデバランまでの距離は約65光年、ヒアデス星団までは約150光年。地球から見ると並んで見えるだけで、実際には全くの別物が重なって見えているのです。

牛の肩のあたりには、もう一つの見どころがあります。「プレアデス星団」、日本では「すばる」と呼ばれる星の集まりです。

すばる
Image Credit: NASA/JPL/Space Science Institute

肉眼でも6〜7個ほどの星が確認できることから、海外では「セブン・シスターズ」とも呼ばれます。アルデバランが年老いた星であるのに対し、すばるは生まれてまだ間もない若い星の集団。赤く老成したアルデバランと、青白く輝くすばる。この対比が、おうし座観察の大きな見どころになっています。

なぜ「牛」なのか:文明をまたいだ共通の見方

おうし座が「牛」として描かれてきたのは、ギリシャだけではありません。古代メソポタミアでは「天の牛」として、エジプトでも牛と結びつけて星座が語られていました。複数の文明が、同じ星の並びを見て同じように牛を思い描いていたのです。

その理由の一つに、おうし座が春の訪れを示す星座だったことが挙げられます。地球の地軸はゆっくりと首振り運動(歳差運動)をしているため、約2万6000年かけて、春分の日に太陽が位置する星座が少しずつ移り変わっていきます。古代のある時期、その春分点はちょうどおうし座の方向にありました。

農耕を行う文明にとって、春の始まりを知らせる星座は特別な存在でした。おうし座が力強さや豊かさの象徴として、複数の文化で大切にされてきた背景には、こうした暦としての役割があったと考えられています。

現代との接続:肩に眠る超新星の記憶

おうし座の角の先端、ζ星のすぐ近くには、「かに星雲(M1)」と呼ばれる天体があります。フランスの天文学者メシエが作成した天体カタログで、記念すべき1番目に登録された天体です。

このかに星雲は、星が一生を終えるときに起こす大爆発「超新星爆発」の残骸です。その爆発が起きたのは、西暦1054年。中国の記録には、この年に「客星」と呼ばれる新しい星が現れ、昼間でも見えるほど明るく輝いたことが記されています。日本にも当時の記録が残されており、この超新星が東アジア各地で観測されていたことがわかっています。

つまり、平安時代の人々が見上げた夜空と、私たちが今見るおうし座は、同じ場所で起きた一つの出来事でつながっているのです。爆発の中心には、つぶれた星の芯である中性子星が残されており、現在も毎秒約30回という高速で自転しながら、パルサーとして電波を放っています。


ギリシャ神話の白い牡牛、複数の文明が共有した春の目印、そして千年前に観測された超新星の記録。おうし座は、物語と歴史と天文学が重なり合う星座です。

冬の夜空では、オリオン座の三ツ星のラインを右斜め上にのばすと、赤いアルデバランとその先のすばるが見つかります。次に冬の星空を見上げる機会があれば、その先に広がる物語を思い出してみてください。

参考文献

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この記事を書いた人

「深夜の星空喫茶」管理人。 三度の飯より星とミルクティーが好き。飯もちゃんと好き。

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